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女性ホルモンは、自律神経と密接な関係にあることはご存知ですか?
更年期を快適に過ごすためには、自律神経を整えることが大切です。
生活リズムや自律神経を整えるテクニックを持っておくことで、女性特有のつらい時期を乗り越えやすくなります。
そこで今回は、更年期に自律神経が崩れがちになる原因や、自律神経の整え方などをご紹介します。自律神経を整えて更年期を快適に過ごしたい方は、ぜひ参考になさってください。
更年期になると自律神経が乱れやすくなる原因には、女性ホルモンが関係しているとされています。
女性ホルモンは脳の視床下部、脳下垂体、卵巣の順に司令が伝わることで分泌されるメカニズムになっていますが、このプロセスの過程にある視床下部は自律神経を司る働きも担っています。
更年期になって女性ホルモンの分泌量が減少すると、自律神経をコントロールしている脳の視床下部にも影響が及ぶため、「体がだるい」「疲れやすい」といった自律神経失調症の症状が現れやすくなるようです。
更年期による自律神経の乱れから来る不調は、更年期疲労とも呼ばれており、更年期に差しかかった女性の多くが経験しています。
更年期に自律神経が乱れやすくなる原因は女性ホルモンの減少にあると説明しましたが、体の中ではどのような変化が起こっているのでしょうか。
まず脳の視床下部には、卵巣に対して女性ホルモンの一種であるエストロゲンの生成を指示する役割があります。卵巣の働きが正常なうちは、脳の指示に従ってエストロゲンを生成できますが、加齢に伴って卵巣の機能が鈍ってくると、脳から指示を受けてもエストロゲンを十分に生成できなくなってしまいます。
するとエストロゲンの量が不足するため、視床下部からは盛んにエストロゲンを生成するよう指示が飛ばされますが、いくら指示を出してもエストロゲンが分泌されません。
その結果、脳の視床下部が混乱してしまい、やがて自律神経にも支障を来すようになります。
自律神経をケアすることで、更年期を快適に乗り越えやすくなります。自律神経を考えるなら、「全体のリズム」を考えて過ごすことが大切です。
1日を通して、体に「昼」と「夜」を認識させましょう。
体は約24時間のリズムを持っているので、生体のリズムに合わせて生活することが大切です。昼間は活動的に過ごし、夜間は休息することで「全体のリズム」が整いやすくなります。
▼体に昼を認識させる方法
昼間にしっかり活動すると、夜は自然と休めるようになります。もし夜間にゆっくり休めない場合は、昼間の活動量が足りないかもしれません。
特にデスクワークの方やテレワークの方は、昼間の活動量が以前より減っている傾向にあります。活動量が少ないと体は昼だと認識できないので、始業前や休憩時間には体を動かすようにしてみてください。
昼間に交感神経が優位な状態を作ると、夜は副交感神経が優位な状態に戻っていきます。
しかし夜間も交感神経が優位な状態を作ると、副交感神経が優位な状態に戻りにくくなってしまうのです。交感神経が優位な状態が続くと、自律神経は乱れがちになってしまいます。
▼交感神経が優位になる行動
例えば夜にヒヤヒヤするようなサスペンスを見たり、大爆笑のお笑いコンテンツを見て笑い転げていたり、大好きなアーティストのライブ・コンサートなどを見て大興奮したりすると、脳は刺激されて「活動的な時間帯だ」と認識してしまいます。
1日の終わりにリラックスのつもりで見ている夜のテレビや動画サービスが、実は交感神経が刺激され続けて、体内リズムを乱してしまう原因になっているかもしれません。本来は夜といえば、リラックスタイム。副交感神経が優位になるように、ゆったりとした気持ちで時間を過ごしたいところです。
同じように激しい運動も交感神経が優位になる行動なので、遅くても19時台くらいまでには終えることが望ましいでしょう。
スマートフォンやパソコンのブルーライトを控えるのも、自律神経を整えるためにできることの1つです。体は夜には寝るための良いリズムを作ろうとするので、それを妨げないように行動してみてください。
呼吸法やヨガなど、自律神経をセルフケアするテクニックをいくつか身に付けておくのもおすすめです。
ただし、最も重要なのは「全体のリズム」を意識することと、「全体のリズム」を妨げる行動を減らすこと。その上で自律神経をケアするテクニックを持っておくと、より効果的に自律神経を整えやすくなります。
大人なら、一般的に健康に良い食事は知っているものですし、食事内容はほどほどにバランスよく、強いていうなら「お腹が空いてから食べる」ことを意識してください。
胃腸にとって食事のベストタイミングは少ない
食事の消化吸収は、副交感神経が優位でなければできません。
朝は、交感神経も副交感神経も活動が低い状態なので、1食分を消化できるタイミングではないと考えられます。体を目覚めさせるという意義はあるかもしれませんが、消化吸収には適さない時間帯ともいえます。
昼間は、本来は交感神経活動が優位な状態です。胃腸にとって、交感神経活動が優位なタイミングの食事は望ましいわけではありません。
夜は副交感神経活動が優位な時間帯ですが、食べ過ぎると睡眠中に消化吸収を行うことになります。眠っている間の消化吸収は胃腸の負担になるため、ベストなタイミングとはいえません。
つまり自律神経の活動から見たとき、「食べる」という行動にベストなタイミングってない、あえていうなら、リラックスできている日中くらい、ともいえるわけです。ですから、大人は空腹を感じたら、好きなタイミングに食べればいいと思います。
世の中で「朝食・昼食・夕食」が望ましいと認識されているのは、お腹が空くからです。
女性ホルモンの影響がなければ、人間はだいたい5~6時間でお腹が空くということが分かっています。
1日24時間で、8時間眠っているとすると、目を覚ましている時間は16時間です。16時間を5~6時間で分けると、大体3回の食事を取ることになりますよね。
大人なら、お腹が空いていないなら食べなくてもいいでしょう。
今は飽食の時代ですから、食べ過ぎによる不調の方が多いと考えられます。ですから大人なら「お腹が空いたら食べる」という選択もあり。
ただし、成長期の子どもたちには、生活リズムを整えるために1日3回食べさせることが推奨されています。「朝」「昼」「夜」の時間を意識する練習の一貫なので、食事を抜くことは勧めないようにしましょう。
食べ物を体内で消化する際に副交感神経が関わるように、食事と自律神経も関わりがあります。「食事も自律神経のケアに役立つ」と思って、空腹を感じる自身の体のサインを受け取るように、自分と向き合うようにしてみましょう。
ここまで紹介した方法の他にも、自律神経を整え、更年期の症状を和らげる方法がいくつかあります。以下のポイントを参考にし、日常生活を見直してみましょう。
前述した生活リズムの調整は、一長一短で効果が出るものではありません。一度乱れた自律神経を整えるには、生活リズムを整える習慣をできるだけ長く、継続して行う必要があります。
家事や仕事、育児、介護などで忙しく、規則正しいリズムで生活するのが難しいと感じることもあるかもしれませんが、そのままずるずると乱れた生活を送らず、早めに軌道修正することを心掛けましょう。
入浴は、交感神経が活発になっている日中から、休息の夜へシフトするのに有効な手段の一つです。
お湯にゆっくり漬かると、緊張していた体がほぐれてリラックスし、副交感神経が優位になります。暑い夏場はシャワーだけで済ませているという方も多いかもしれませんが、できれば季節を問わず、毎日湯船に漬かる習慣を付けましょう。
自律神経を整えるための入浴方法のこつは以下の通りです。
髪や体を洗う時間を挟んで、前後に2回全身浴をすると、体に負担がかかりにくくなり、リラクゼーション効果が高まります。
太陽が出ている間は体に活動時間であることを認識させるために、適度な運動を行う習慣を付けましょう。
運動といっても激しいスポーツなどを行う必要はなく、日々の生活の中でウォーキングを取り入れたり、自宅の階段などを使って昇降運動を行ったりするだけでも構いません。
まとまった運動をする時間がなかなか取れない方も、例えば通勤で一駅分歩く、エスカレーターの代わりに階段を使うなどの工夫を取り入れれば、活動量を増やすことができます。
また、歩くときは腕や脚を大きく振るなど、動きにも意識するとより効果的です。
自律神経を整えるには、栄養バランスを意識した食事を取ることも大切です。
中でも、神経の高ぶりを抑えて心身をリラックスさせてくれるGABAが多く含まれる食材や、トリプトファン、これらの成分の生成を促すタンパク質やビタミンB6などを積極的に摂取すると良いでしょう。
GABAはトマトや玄米、ナスなどに、トリプトファンは乳製品や大豆製品、バナナなどに、タンパク質やビタミンB6は魚類や赤みの肉、ごまなどにそれぞれ多く含まれているため、食卓に上手に取り入れてみることをおすすめします。
自律神経を整えるためには、1日を通して「全体のリズム」を意識した行動をすることが大切です。
昼間はできるだけ活動的に行動し、夜間は休息する時間にしましょう。
そして、夜は交感神経活動が優位な状態にならないように、激しい運動やドキドキするような映像作品の視聴、スマートフォンなどの光を見るのは控え、ゆったりと過ごしてみてください。
自律神経の視点から食事について考えると、胃腸にとって食事の最適といえるタイミングは、リラックスしている日中くらいです。大人なら食事のタイミングにこだわらず、お腹が空いたタイミングで食事を取るようにしてみてください。