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新型コロナウイルス感染症が流行した際、テレビやメディアで「血中酸素濃度」という言葉が頻繁に使われていました。新型コロナウイルス以外にも、血中酸素濃度が低下する原因となる病気はいくつかあります。
血中酸素濃度が低下すると、息切れや倦怠感、頭痛など、さまざまな症状が現れることがあります。これらの症状が続くと、日常生活にも支障をきたすことがあります。この記事では、血中酸素濃度が低下する原因や、それを正常に保つための生活習慣とともに、現れる症状についても詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてください。。
まずは、血中酸素濃度の基礎知識と役割を見ていきましょう。
血中酸素濃度とは、血液中の酸素量を示す数値です。血中酸素飽和度とも呼ばれ、医療用語ではサチュレーションと呼ばれます。
人間を含めて、多くの動物は呼吸で酸素を取り込みます。取り込んだ酸素は、血液中に存在するヘモグロビンと結合し、酸化ヘモグロビンへと変化して、全身に運ばれる仕組みです。そのため、血中酸素濃度を測定すれば、肺にある酸素がどの程度全身に運ばれているかを測定できます。
血液中の酸素の体における役割は、身体を構成するさまざまな細胞の機能を正常に維持することです。主に以下のような役割があります。
このように血液中の酸素は、身体の機能を正常に働かせ、生きるために必要なエネルギーを作るのに必要不可欠なものです。わずか数分でも酸素が供給されなければ、動物は死に至ってしまいます。また脳は特に多くの酸素を消費する臓器で、脳に2〜3分程度十分な酸素が供給されないだけで、活動できなくなってしまうとされています。
血中酸素濃度の正常値は「96〜99%」です。「95%未満」まで下がってきたら、血中酸素濃度が低いので注意してください。
ただし、血中酸素濃度はちょっとしたことで下がることもあります。普段から血中酸素濃度を測り、落ち着いているときの数値を記録しておくことが大切です。
また、最近では血中酸素濃度を計測できるウェアラブルデバイスも増えています。医療機器ではないので思った以上に低い数字が出るケースも多いようです。不調になる前から使っておくと、その利用しているデバイスでの平時の平均値を知ることができます。平時の数字より下がった状態になっていないか見極めるようにするのがよいでしょう。
ここからは血中酸素濃度が低下する原因と、起こり得る可能性がある症状について見ていきましょう。
血中酸素濃度が低くなる原因の一つは、肺に十分な酸素が取り込めていないことです。
前述した通り、酸素は肺に取り込まれた後、血液中のヘモグロビンと結合して全身に運ばれます。そのため、そもそも肺に十分な酸素が取り込めていなければ、ヘモグロビンと酸素は結合できません。肺が酸素を取り込めなくなる疾患には、ぜんそくや無気肺などがあります。
血中酸素濃度が低くなるもう一つの原因は、肺胞から酸素が取り込めなくなることです。
肺に取り込まれた酸素は、肺の末端にある肺胞と呼ばれる組織に取り込まれ、そこから血液に取り込まれて、ヘモグロビンと結合します。そのため、何らかの原因で肺胞に酸素が取り込まれないと、肺に酸素が取り込めていても酸化ヘモグロビンに変化できず、全身に酸素を届けることができません。肺気腫や肺炎、肺に穴が開く気胸などによって肺が萎んでしまうと、肺胞から酸素が取り込めなくなってしまい、血中酸素濃度が下がってしまいます。
血中酸素濃度が低くなると、全身の臓器に酸素が供給されなくなってしまい、以下のような症状が起こることがあります。
また睡眠中に呼吸が止まったり浅くなったりする「睡眠時無呼吸症候群」によって血中酸素濃度が低くなり、起床時に血圧が上がる状態を繰り返していると、度々ダメージを受けた血管が弾性を失ってもろくなるため、高血圧や心筋梗塞、脳梗塞、心不全といった疾患が引き起こされるリスクが高くなってしまいます。最悪の場合、突然死してしまう恐れもあるので、十分注意が必要です。
息苦しさを感じないのに、血中酸素濃度の数値が低い場合は要注意。
「幸せな低酸素症(Happy Hypoxia)」といわれている症状で、肺炎が徐々に広がっていくときに起こります。新型コロナウイルス感染症で起こりやすいことが分かっている症状です。
息苦しさがなくても、血中酸素濃度が95%未満に下がっていたら危ないと思うようにしてください。かかりつけの医師や保健所に連絡しましょう。
医療現場で血中酸素濃度を測る場合、パルスオキシメーターや血液ガス分析装置が使われます。市販のパルスオキシメーターや、一部のスマートウォッチを使えば、ご自身で血中酸素濃度を測定することも可能です。
ここからはパルスオキシメーターとスマートウォッチを使って、血中酸素濃度を測定する方法を見ていきましょう。
パルスオキシメーターとは、血中酸素濃度と脈拍数を測定できる小型の医療機器です。
動脈を流れる血液中の酸素量を採血なしに測定できます。酸素と結合していないヘモグロビンは暗い赤色をしていますが、酸素と結合することによって生成される酸化ヘモグロビンは、鮮やかな赤色になるのが特徴です。パルスオキシメーターでは、ヘモグロビンと酸化ヘモグロビンの光の吸収率の違いを測定することにより、血中酸素濃度を推計できます。
パルスオキシメーターの使い方は簡単です。家庭用の場合、クリップ型になっているパルスオキシメーターを指先に挟むだけで、血中酸素濃度と脈拍数が測定できます。人差し指に装着するケースが多いですが、どの指でも問題ありません。
具体的な測定方法をご紹介します。
数値が出るまでの時間は、10〜30秒程度です。測定が終わるまで、身体を動かさずに待ちましょう。
計測が完了すると、パルスオキシメーターのモニターに「SpO2」と「BPM」の数値が表示されます。SpO2が血中酸素濃度、BPMが脈拍数です。パルスオキシメーターの種類によっては、脈拍のリズムや強さが波形やバー、数値で表示されるものもあります。
スマートウォッチの多くは、日々の活動量や歩数、心拍数などを測ることができるため、健康管理のために活用している方も多いはずです。全てのスマートウォッチが対応しているわけではありませんが、血中酸素濃度を測定できるスマートウォッチも登場しています。
スマートウォッチに搭載されている血中酸素濃度の測定機能は、パルスオキシメーターの簡易的な機能です。血管にLEDを当てることで、ヘモグロビンと酸化ヘモグロビンの光の吸収率の違いを基にして血中酸素濃度を推定します。
具体的な測定方法をご紹介します。
スマートウォッチの場合も、計測中は身体を動かさないように注意しましょう。
日々使用しているスマートウォッチで血中酸素濃度が測定できるのは大きなメリットですが、スマートウォッチの血中酸素濃度測定機能は、パルスオキシメーターと異なり医療機器の認可は受けていません。血中酸素濃度測定機能を搭載したいずれのスマートウォッチも、一般的な健康維持や健康管理を目的としたもので、病気の治療や予防を目的としたものではないので注意しましょう。
とはいえ、より手軽に血中酸素濃度を測定できるため、個人的な健康管理には役立ちます。今後健康管理を目的にスマートウォッチの購入を検討しているのなら、血中酸素濃度の測定が可能かどうかもチェックしておくと良いでしょう。
血中酸素濃度の正常値を出すためには、以下のことに注意しなければなりません。
冷え性で指先が冷たくなっているときは、血中酸素濃度を正確に測れません。なぜなら、指先の血流が悪くなっているので、パルスオキシメーターの赤外線が血液を抜けにくいからです。
指先が冷たいときは、温めたり揉んだりして末梢の循環を良くしてから測りましょう。
市販のパルスオキシメーターは、粗悪品が出回っていることもあるので要注意です。安価すぎる機種だと数値が不正確だったり、すぐに壊れたりすることがあります。安価すぎるものは避け、信頼できるメーカーのパルスオキシメーターを購入するのがおすすめです。
爪に色が付いていると、正しい数値を測れない場合があります。以下で詳しく解説します。
ネイルカラーや変色があると、血中酸素濃度を正確に測れない場合があります。
なぜなら、パルスオキシメーターは爪から赤外線を通し、血液の「色」から血中酸素濃度を測っているからです。
ジェルネイルやスカルプなど、厚みのあるネイルも正しく計測できない場合があります。計測する際は、派手なネイルは控えた方がよいでしょう。
ネイルを付けていても、血中酸素濃度を測ることは可能です。
▼ネイルをしたまま血中酸素濃度を測る方法
血中酸素濃度は足の爪でも計測できます。手や足にネイルを付けたい場合は、足の指にネイルをしていない箇所を作っておきましょう。
ここからは運動が血中酸素濃度にもたらす影響と、血中酸素濃度を正常に保ち、低下した数値を改善するために見直したい生活習慣をご紹介します。
運動をする際は筋肉を収縮させる必要があるため、エネルギーが必要になります。身体は、ATP(アデノシン三リン酸)という物質が、ADP(アデノシンニリン酸)に変化する際に作り出されるエネルギーを使って筋肉を収縮させます。ATPはすぐになくなってしまうので、筋肉を収縮させ続けるためにはADPからATPを再び合成しなければなりませんが、再合成のためにもエネルギーが必要です。
ADPからATPを再合成する際に必要なエネルギーを作り出す方法の一つとして、「有酸素性(エアロビック)エネルギー供給機構」があります。これは、グリコーゲンを酸素で燃やし、水と酸素に変換する際にエネルギーを作り出す仕組みです。有酸素性エネルギー供給機構を働かせるには、酸素が欠かせません。
肺に取り込まれた酸素は、ヘモグロビンと結合して酸化ヘモグロビンとなって筋肉に届けられた後、酸素とヘモグロビンが分解されて、筋肉に酸素が放出されます。筋肉で放出される酸素は25~50%程度で、多くの酸素は酸化ヘモグロビンのまま肺に戻ります。また肺に取り込まれた酸素は全てがヘモグロビンと結合するわけではなく、一部はそのまま呼気として排出されるので、筋肉に供給する酸素量は十分にある状態です。
ペースを上げて運動をすると息が上がってきつく感じてしまうことがありますが、これは筋肉に供給する酸素が足りないのではなく、グリコーゲンの分解が無酸素で行われ、乳酸などが作り出されることによって、筋肉の収縮が邪魔されてしまうからです。
筋肉を動かす際に使える酸素量が増えれば、筋肉の収縮がしやすくなり、運動効率が上がります。運動効率を高めるためには、運動しているときに血中酸素濃度の割合の変化が大きくなるように、生活習慣を改善することが大切です。
血中酸素濃度を高めるには、酸素濃度を高める効果が期待できる栄養素を意識して摂取することが重要です。
酸素濃度を高める働きを持つ栄養素は、ミネラルの一種であるゲルマニウムです。ゲルマニウムは、ヘモグロビンが効率良く酸素を運搬できるようにサポートする作用を持つ他、赤血球の老化を防止する働きを持ちます。ゲルマニウムを摂取することで、間接的に血中酸素濃度を高める効果が期待できるでしょう。
ゲルマニウムは高麗人参、にんにく、アロエ、クコの実の他、野菜や乳製品、魚介類、穀類などに含まれているものの、その量はごくわずかです。食品だけでゲルマニウムを摂取するにはかなりの量を食べなくてはなりません。
そこでおすすめなのが、栄養バランスの取れた食事を意識しつつ、ゲルマニウムを配合したサプリメントの活用です。ただし、体質によってはゲルマニウムを摂取することにより、食欲低下や腹痛、口内炎などの症状が起こることがあるので、医師に相談した上で摂取するようにしてください。
睡眠時に無呼吸状態が続く「睡眠時無呼吸症候群」が起こると、睡眠中の血中酸素濃度に異常が起きてしまいます。前述した通り、睡眠中に何度も血中酸素濃度が低下すると、血管がもろくなってさまざまな疾患を引き起こす恐れがあるため、酸素濃度を低下させないように睡眠の質にこだわることが重要です。
睡眠の質を向上させるには、以下のポイントに注意しましょう。
睡眠の質を高めるための生活習慣の改善は、睡眠時無呼吸症候群の治療法の一つとされています。ただし中等症以上の睡眠時無呼吸症候群の場合、放置すると命の危険もあるため、速やかにより専門的な治療を受けることが大切です。睡眠の質向上を意識しつつ、医師の診断を仰ぐようにしてください。
呼吸法を意識したり、リラクゼーション方法を取り入れたりすることで、血中酸素濃度を高められる可能性があります。
まずはおすすめの呼吸法からご紹介します。
▼口すぼめ呼吸
本来は動きながら行う呼吸法ですが、まずは安静な状態で行って、慣れてきたら動きながらこの呼吸法を意識してみましょう。
▼腹式呼吸
1日5回程度繰り返すところから始めて、慣れてきたら10〜20回程度を行えるようにしてみてください。ただし人によっては、腹式呼吸でより息苦しさを感じてしまうこともあるかもしれません。あくまで無理のない範囲で行うようにしましょう。
血中酸素濃度を改善するには、意識的にリラックスできる状態を作ることも大切です。以下のリラクゼーション効果が期待できる呼吸筋ストレッチを取り入れてみましょう。
▼肩のストレッチ
▼胸のストレッチ
▼背中のストレッチ
前述した通り、パルスオキシメーターで血中酸素濃度を測定した際の正常値は96〜99%です。95%未満まで低下すると、血中酸素濃度が低いため注意しなければなりません。
パルスオキシメーターで測定して異常な数値が出たのであれば、息苦しさやめまいなどの自覚症状のあるなしにかかわらず、速やかにかかりつけ医を受診してください。
またパルスオキシメーターで測定できる血中酸素濃度は健康管理や健康維持に役立ちますが、血中酸素濃度の数値だけで、正確な身体の状態の判断はできません。血中酸素濃度が正常だとしても、何らかの自覚症状がある場合は診察を受けた方が安心です。
血中酸素濃度を日頃から測っておくことで、自覚症状がない不調にもいち早く気付けるようになります。
息苦しさがなくても、血中酸素濃度が95%以下になってしまったときはすぐに医療機関に相談してください。
ただし家庭用のパルスオキシメーターは、ネイルカラーや冷えなどで正確な数値が出ないこともあります。正確に測るためのポイントを押さえて計測し、血中酸素濃度を毎日の健康管理に役立てましょう。