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世界的な睡眠博士が簡単解説! レム睡眠とノンレム睡眠って何? どちらが大切?

公開日:2023.03.13
更新日:2025.03.10
 

医学的な研究が続く「睡眠」において、多くの間違った情報も広がっています。

例えば「夢を見るレム睡眠は、浅い睡眠だからだめ」「夢を見ないノンレム睡眠をできているなら、睡眠時間は短くても大丈夫」「90分サイクルで眠る」など……聞いたことがあるのではないでしょうか。

レム睡眠・ノンレム睡眠については多くのメディアが取り上げているので、言葉自体は聞きなじみがありますよね。なんとなく「浅い睡眠」「深い睡眠」と認識しているものの、実際には間違った情報をうのみにしている方も多いようです。

そこで今回は、睡眠博士である柳沢正史教授に「レム睡眠とノンレム睡眠」について詳しく教えていただきました。「睡眠不足と病気の関係」や「最適な睡眠時間を知る方法」についても解説いただいたので、ぜひ最後までチェックしてみてください。

レム睡眠とは?

レム睡眠は脳が活動している睡眠状態のことで、英語で「REM Sleep」と表記されます。 REMはRapid Eye Movementの略で、日本語では「急速眼球運動」の意味です。

すなわち、レム睡眠の際は眼球がキョロキョロと動いている状態で、体は休息を取っていても脳は活動している状態になります。レム睡眠中の脳波は、起きているときと同じように小刻みな波形なので、脳の状態は起きているときにかなり近いといえるでしょう。

レム睡眠の間、脳では起きている間に得た情報を整理しており、これがストレス解消につながるといわれています。またレム睡眠中には記憶の定着も行われ、カナダ・マギル大学の教授が行った実験では、レム睡眠中の脳の活動が妨げられると、記憶が十分に定着しなくなることも分かっています。

ノンレム睡眠とは?

ノンレム睡眠とは、体だけでなく脳も休息を取っている睡眠状態のことです。英語では「Non-REM Sleep」と表記され、急速眼球運動が行われていない睡眠を意味します。

睡眠に入るとまずノンレム睡眠に入り、その後レム睡眠とノンレム睡眠が繰り返される仕組みです。ノンレム睡眠中はN1・N2・N3の3段階に分けられ、N1・N2が浅い眠り、N3が深い眠りといわれています。睡眠の前半のノンレム睡眠では、深い眠りであるN3の状態が多く、後半になると浅い眠りのN1・N2が増える傾向にあります。

ノンレム睡眠中は脳の活動と共に自律神経の活動も抑えられているのが特徴です。体と脳の回復に欠かせない眠りです。

「レム睡眠は浅い睡眠」「ノンレム睡眠は深い睡眠」の認識は間違い

柳沢教授:よく「レム睡眠は浅い睡眠」「ノンレム睡眠は深い睡眠」と思われていますが、その認識は誤りです。

聴覚に対する覚醒閾値(覚醒が生じる音の大きさ)から眠りの深さを図ると、ノンレム睡眠・レム睡眠のどちらも同じように深い睡眠であることが明らかになっています。

レム睡眠の深さは、ノンレム睡眠の三段階で表すと「第二層〜第三層」くらいです。睡眠の深さを定義するのは難しいのですが、レム睡眠もかなり深い睡眠といえるでしょう。

レム睡眠とノンレム睡眠の違い

レム睡眠とノンレム睡眠は、具体的にどのような違いがあるのでしょうか。

レム睡眠とノンレム睡眠は脳の活動パターンが違う

柳沢教授:レム睡眠とノンレム睡眠では、脳の大脳皮質にある神経細胞の活動パターンが全く異なることが分かっています。

脳の大脳皮質とは、思考したり計算したりするところです。人間の場合は、感情を司るのもほとんど大脳皮質といわれています。

レム睡眠中、大脳皮質の細胞は覚醒時と同じような活動パターンです。大脳皮質だけ見ると、まるで起きている状態のように見えます。

しかし眠っているので、知覚刺激は外界から切り離されています。さらに「レム脱力」といって、全身の筋肉の力が完全に抜けて、基本的には全く動かない状態になります。

一方でノンレム睡眠の大脳皮質は、覚醒時の活動パターンと異なります。多くの神経細胞が一緒に(同期して)活動していて、レム睡眠とは明らかに違う活動パターンになっているのです。

ただし、なぜ大脳皮質の神経細胞が同期して活動するのか、具体的なことはよく分かっていません。ノンレム睡眠中に脳で何が起こっているのかは、先端の研究でも解明されていない領域です。

健康な方のレム睡眠・ノンレム睡眠のサイクル

柳沢教授:健康な方の場合、入眠すると最初はノンレム睡眠に入ります。

まどろみから始まって、次第に深くなっていきます。そして深い睡眠が訪れ、平均60〜80分くらいでレム睡眠に切り替わります。

「ノンレム睡眠→レム睡眠」のワンサイクルが、個人差はありますが約90分くらいです。約90分のサイクルを、眠っている間に4〜5回繰り返して朝になります。

また、夜の前半はノンレム睡眠の中でも深い睡眠が多く、レム睡眠は少なめです。夜の後半になるとノンレム睡眠は浅く短くなって、レム睡眠の時間が増えてきます。

レム睡眠・ノンレム睡眠のどちらも大切

柳沢教授:先端研究で分かっていることは、レム睡眠・ノンレム睡眠のどちらも非常に大切なものだということです。

かつては「睡眠のゴールデンタイムは最初の90分」といって、最初の深いノンレム睡眠が大切だと考えられていました。確かに深い睡眠が大切なことは間違いないのですが、だからといってレム睡眠が不要なわけではありません。

むしろ先端研究の領域では、夜の後半に多くなるレム睡眠も非常に大切だといわれています。つまり、結論としては最初から最後まで全ての睡眠が大切ということになります。

睡眠不足によってリスクが上がる病気

「ノンレム睡眠→レム睡眠」の約90分サイクルを4〜5回繰り返し、7時間くらい眠るのが理想の睡眠です。

しかし、多くの日本人は睡眠時間が少ない傾向にあります。慢性的な睡眠不足は、さまざまな病気を発症しやすくなるので注意が必要です。

慢性的な睡眠不足は「メンタルの不調・メタボリックシンドローム・認知症・がん」のリスクを上げる

柳沢教授:睡眠不足は、全ての病気のもとになります。

特に、慢性的な睡眠不足によってリスクが上がるのは「メンタルの不調」「メタボリックシンドローム」「認知症」「がん」です。例えばうつ病や生活習慣病、脳機能の低下など、本当にさまざまな病気のリスクが上がってしまいます。

逆に、そのような病気になると睡眠の状態も悪くなることが知られているので、いわゆる相互リスクの関係といえるでしょう。心と体の不調を感じるなら、睡眠不足を改善することが健康への第一歩です。

ダイエットの最大の敵は睡眠不足

柳沢教授:睡眠不足は、ダイエットの最大の敵です。

ある実験では「軽い肥満で寝不足気味な人」を集めて、2週間だけ毎日2時間くらい多く眠るように指示しました。

すると平均的に1時間半ほど睡眠時間が長くなり、その間に平均摂取カロリーが1日当たり300kcal減少していたのです。つまり、眠るだけで摂取カロリーが減って、体重や体脂肪は減りやすくなると考えられるでしょう。

逆に「健康的な体型の人」を集めて、2週間だけ毎日4時間睡眠に制限し、あえて寝不足な状態を作りました。

すると、寝不足になった人々は平均摂取カロリーが1日当たり300kcalくらい増加しました。寝不足になった人々は、たった2週間で体重が平均0.5kg増加し、お腹の内臓脂肪は10%増加したのです。

最適な睡眠時間は個人差がある

人間の睡眠時間は平均7時間くらいといわれていますが、最適な睡眠時間は個人差があります。

最適な睡眠時間が短い方は、6時間睡眠くらいでも大丈夫です。逆に最適な睡眠時間が長く、8時間くらい眠らないとすっきりできない方も意外と多く見られます。

自分自身の最適な睡眠時間を決める方法

柳沢教授:最適な睡眠時間は、自分自身で実験しながら見つけられます。

▼最適な睡眠時間を決める方法

  1. 毎日同じ時刻に就寝・起床する(土日祝も)
  2. 睡眠不足を感じる方は30分ずつ睡眠時間を延ばす
  3. 30分ずつ長く眠るのを5〜7日ほど続ける
  4. 「これ以上眠れない」というポイントを見つける

まずは土日祝日も含め、毎日同じ時間に就寝・起床しましょう。例えば0時〜7時まで眠ると決めて繰り返し、それで「昼間眠くない」「十分眠っている気がする」と感じられれば7時間睡眠が最適です。

7時間睡眠では「なんとなく睡眠時間が足りない」と感じるなら、睡眠時間を30分ずつ伸ばしてみてください。5〜7日ほど30分ずつ睡眠時間を伸ばしているうちに、「これ以上眠れない」というポイントが見つかるはずです。

睡眠不足が解消された状態なら、最適な睡眠時間より長く眠ろうと思っても眠れません。「十分に眠れたので日中眠くない」「これ以上眠ろうと思っても眠れない」というポイントが、最適な睡眠時間だと考えられます。

寝だめはできない! 毎日の睡眠時間をしっかり確保しよう

柳沢教授:睡眠を分かりやすく例えるなら「借金はできても貯金はできない」というイメージです。

睡眠の借金とは、いわゆる睡眠不足の状態のことです。「睡眠負債」といわれ、眠ることで借金を返済できます。

しかし睡眠の貯金、いわゆる「寝だめ」はできません。なぜなら、人間は十分に睡眠時間を確保できているなら、それ以上眠ろうとしても眠れないからです。

日本の働き盛りの世代の約7〜8割が寝不足なので、最適な睡眠時間を見つけて「無自覚な睡眠負債」を解消しましょう。睡眠負債を解消すると、人によっては「霧の中で生活していたのが晴れた」ような心地よい感覚を味わえるはずです。

レム睡眠・ノンレム睡眠は両方大切! 最適な睡眠時間を毎日保とう

レム睡眠とノンレム睡眠の研究から、睡眠は健康にとって非常に重要であることが分かりました。

一般的に夢を見るレム睡眠は「浅い睡眠」だと思われていますが、先端研究ではノンレム睡眠と同じくらい深い睡眠であることが分かっています。睡眠の前半に多くなる「深いノンレム睡眠」も大切ですが、睡眠の後半に多くなる「夢を見るレム睡眠」も非常に重要なのです。

慢性的に睡眠時間が不足していると「メンタルの不調」「メタボリックシンドローム」「認知症」「がん」などさまざまな病気のリスクが上がります。特に睡眠不足はダイエットの敵なので、痩せて健康的になりたい方は睡眠不足の改善に取り組むことから始めてみてください。

睡眠は「借金(睡眠負債)」はできても「貯金(寝だめ)」はできないので、毎日しっかり睡眠時間を確保することが健康につながります。最適な睡眠時間は個人差があるので、毎日30分ずつ睡眠時間を伸ばしながら最適な睡眠時間を見つけて、できるだけ毎日同じ時間に就寝する・同じ時間に起床することを心掛けましょう。

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