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「免疫力を上げたい」「感染症にかかりたくない」など、免疫力アップについて関心が高まっている人もいるのではないでしょうか。
免疫力は体の防御システムであり、免疫力が高ければ病気にかかりにくくなります。いつまでも若々しく健康な体を保つためには、免疫力を高い水準で保つことが大切です。
そこで今回は、薬剤師で漢方アドバイザーの大久保愛先生に「免疫力アップのコツ」について教えていただきました。
免疫力アップの方法は、生活習慣を整えて美しい姿勢で過ごし、食べ過ぎないことです。至ってシンプルな方法ですが、頭では分かっていても実際に行動できていない人が多いのではないでしょうか。ここでは、気を付けたい項目ごとに具体的なアクションをご紹介します。
免疫力をアップさせるには、適度な運動が欠かせません。体温が1℃下がると免疫力が30〜40%も低下するといわれているため、適度な運動で体を温めることは免疫力アップにおすすめです。また、中程度の運動を適度に続けていると「IgA」という細菌やウイルス類をシャットアウトする成分を含んだ唾液を多く・素早く分泌することが分かっています。
疲れていたり時間がなかったり、運動そのものが苦手な人は、日常生活の中で簡単に体を動かせる習慣を身に付けましょう。達成感をおぼえることで自律神経が整い、免疫力アップにつながります。日常のちょっとした動きでも、継続すれば体は強くなっていくので、小さな目標を立て、少しずつ負荷を増やしていきましょう。
▼日常生活における軽い運動
もう少しハードな運動をしてみたいという人は、体の約7割の筋肉が集中する下半身を積極的に動かしてみてください。
▼下半身の鍛え方
指先を動かすことで、停滞していた血流を促せます。だるさやむくみといったお悩みにも有効なので、ぜひ試してみましょう。グーチョキパーやつま先立ちなど、簡単な動作から始めて、慣れてきたらスクワットにもチャレンジしてみてください。
ただし激し過ぎる運動を行うと、免疫機能が低下する「オープンウィンドウ」という期間が発生してしまうので、軽く汗をかく程度の運動を定期的に行うのが望ましいです。特に、以下のような兆候がある人は、ハードな運動を控えましょう。
▼ハードな運動を控えた方がいいサイン
日常のちょっとした動きでも継続すれば体は変わってくるので、ぜひ軽い運動から試してみてください。
免疫細胞の増殖や活性化を促すには、栄養バランスの整った食事も必要です。バランスと一口に言っても、「栄養バランス」や「時間帯のバランス」などさまざまな要因が含まれています。それぞれを詳しく見ていきましょう。
まずは栄養バランスです。厚生労働省は一日に必要なエネルギーのうち、13~20%をたんぱく質から、20~30%を脂質から、50~65%を炭水化物から取ることをおすすめしています。これらをまんべんなく食事で取り入れるなら、一十三菜のスタイルを取り入れてみましょう。積極的に取りたい栄養素や食品については、後述します。
食事を取る時間帯も重要です。朝は食べる気分にならず朝食を抜く人もいますが、なるべく控えることをおすすめします。朝食を食べないと午前中の体温が低いままになってしまい、先述した通り免疫力が低下してしまいます。夜遅い時間に食事をするのも、自律神経の乱れにつながり、睡眠の質を低下させかねません。結果的に免疫力が下がってしまうので、寝る3時間前までに夜ご飯を済ませましょう。
栄養バランスと同様に気を付けたいのが、「食べ過ぎないこと」です。
なぜなら、カロリーを抑えた食事を取ることで細胞の「オートファジー」という働きが活性化するからです。
私たちの体内に老廃物や活性酸素が体内にたまると、免疫力の低下や老化を引き起こします。しかし「オートファジー」が働けば古い細胞をいったんリセットし、新しい細胞に作り変えてくれます。
ただし「オートファジー」は、常に満腹な状態だとあまり働きません。そのため、食べ過ぎないように心掛けることが非常に重要です。
▼オートファジーを働かせる方法
16時間断食とは、一日のうち16時間は食事をせず、残りの8時間だけ食事をするという方法です。8時間の間に取る食事で必要なカロリーや栄養素を満たし、かつ筋トレなどの軽い運動ができるのであれば、食事法として試してみるのもおすすめです。
よく噛んで食べると、幸せホルモン「セロトニン」の分泌が増加します。
▼よく噛んで食べるコツ
「セロトニン」は心を落ち着けたり、脳を活性化させるホルモンです。女性ホルモンとも連動しているので、「セロトニン」を増やすことで更年期のイライラや不安も緩和されます。
「セロトニン」によってストレスやホルモンバランスが落ち着くと、自律神経が整います。自律神経と免疫は密接な関係があるため、よく噛んで「セロトニン」を増やすことで免疫力アップにつながるのです。
また「セロトニン」は入眠をスムーズにする「メラトニン」の原料になります。寝る・起きるのタイミングを一定にすることで眠りやすくなるので、できるだけ休日でも早起きするように心掛けましょう。
睡眠の質を上げることも、免疫力アップに効果的です。
入眠してから約90分ほどで、「ノンレム睡眠」という深い睡眠に入ります。深い眠りの間に「成長ホルモン」が分泌されて体を修復するので、入眠〜90分くらいの質をどれだけ上げられるかが大切です。
▼睡眠の質を上げる方法
人は、朝起きてから夕方にかけて深部体温が上がり、夜から朝にかけて下がっていきます。深部体温がぐっと下がったときに眠くなるので、血流が悪くて日中から体が冷えている人は、入浴してしっかり温まるのがおすすめです。
また、眠気をもたらす「メラトニン」は、起床から15時間後くらいに分泌され始めます。そのため、毎日一定の時間に起床し、体内時計を整えておくことも大切です。
免疫力アップの食事方法として「栄養バランスの整った食事を取る」「食べ過ぎない」「よく噛んで食べる」のが効果的とお伝えしました。では、免疫力アップのためには具体的に何を食べれば良いのでしょうか。
免疫力アップには「ビタミンD」の豊富な食材がおすすめです。
▼ビタミンDが豊富な食材
ビタミンDは、皮膚が直射日光に当たると生成されます。しかし「外出しにくい」「冬場で日照時間が少ない」といった理由から、ビタミンDは不足しがちです。
ビタミンDは免疫力アップや骨粗鬆症リスクの低減、がんを予防する可能性があるといわれています。ビタミンD不足を感じるときは「きのこ類」や「丸ごと食べられる魚」などを積極的に取りましょう。
腸には「腸管免疫」という免疫システムがあり、体全体の70%もの免疫機能を担っています。そのため腸内環境を良くすることが、免疫力アップに効果的です。
▼腸内環境を良くする+バリア機能を高める食材
食物繊維と発酵食品には、腸内環境を整える働きがあります。さらに、腸のバリア機能を強化する「ビタミンA」を併せて取ることもおすすめです。
免疫力アップの方法は諸説ありますが、まずは基本的な生活習慣を見直すことが大切です。
体温を上げたり免疫力の高い唾液の分泌を促したりするため、早歩きや階段の上り下りといった中程度の運動習慣を心掛ければ、体力が付くだけでなくむくみやだるさといったお悩みを解消することにもつながります。本記事でご紹介したような運動を、無理のない範囲で実践してみましょう。
また食事は「栄養バランスを整える」「食べ過ぎない」「よく噛む」を意識することで、免疫力が上がりやすくなります。さらに睡眠の質を良くして、体の疲れをしっかり修復してあげましょう。
運動や食事、睡眠をバランスよく生活に取り入れて健康的な行動を継続すれば、免疫力はアップしていきます。日常のちょっとした行動で変わるので、積極的に取り組んでみてください。