疲れやすくなってきた、いつも身体がだるいと感じる方へ
若いころと比べると、年齢を重ねるごとに、少しの生活習慣の乱れで疲れを感じやすくなってきます。
健康な身体や肌を保つためには、バランスの取れた食生活や適度な運動、質の良い睡眠が非常に重要です。
しかしながら、忙しい日々の中でどれも完璧にこなすことは難しいはず。そんな時に、考えたいのが、サプリメントで不足している栄養を補うことです。
いつまでも元気で美しくいたい、そうお考えの方はぜひこの機会に検討してみましょう。
・筑波大学 国際統合睡眠医科学研究機構 機構長 ・株式会社S’UIMIN 代表取締役
柳沢 正史
筑波大学医学専門学群・大学院医学研究科博士課程終了。
31歳で渡米し独立、テキサス大学サウルウェスタン医学センター医学センター教授・ハワードヒューズ医学研究所研究員として、2014年まで24年にわたり研究室を主宰。
2010年に内閣府 最先端研究開発支援プログラム(FIRST)に採択され、筑波大学に研究室を開設。 2012年より文部科学省世界トップレベル研究拠点プログラム 国際統合睡眠医科学 研究機構(WPI-IIIS)機構長・教授。
2017年、筑波大発のスタートアップベンチャー企業「S’UIMIN」を起業。 2021年よりムーンショット型研究開発事業のプロジェクトマネージャーを務める。
目次
「忙しくて夜の睡眠時間を十分に確保できない」「午後は眠くて仕事に集中できない」など……日中の強い眠気やダルさを感じていませんか?
仕事や家庭、趣味などが充実しているときは、どうしても十分な睡眠時間を確保できないこともありますよね。しかし慢性的な睡眠不足は脳のパフォーマンス低下や、さまざまな病気リスクを高めてしまうので注意が必要です。
そこで今回は、睡眠博士の柳沢正史教授に「睡眠不足の改善法」「効率のよい昼寝・パワーナップのやり方」を教えていただきました。ちょっとした工夫で日中のパフォーマンスを上げられるので、ぜひ今日から睡眠改善に取り組んでみてください!
睡眠の質と量はどちらが大切なのか
睡眠の質を改善する方法
脳のパフォーマンスを上げる昼寝「パワーナップ」ってどんなもの?
柳沢教授:睡眠を改善する上で最も大切なのは、とにかく睡眠時間を確保することです。
睡眠時間を確保しないまま、睡眠の質を上げようとしても意味がありません。「短時間で睡眠の質を上げてしのぎたい」という方も多いのですが、それは無理といっても過言ではないでしょう。
睡眠の質を改善したいなら、まずは睡眠時間を確保するのが第一歩です。ご自身にとって適切な睡眠時間を確保し、睡眠不足を改善した上で、睡眠の質を向上させることに取り組んでみてください。
レム睡眠とノンレム睡眠ってどんなもの?睡眠不足によって太りやすくなるって本当?
柳沢教授:万人に共通する「睡眠の質を上げる方法」は、残念ながらほとんどありません。
しかし「睡眠の質を確実に悪くすること」は多く解明されています。「睡眠の質」を上げるためには、睡眠の減点ポイントを1つずつ減らしていくことが万人に共通する確実な方法です。
適切な睡眠時間が確保できるようになったら、以下の4つの方法に取り組んでみましょう。
柳沢教授:睡眠の質を改善するために、とても大事なのが寝室の環境です。
寝室は「暗くて静か」な状態を保ってください。「暗くて静か」というと当たり前のことのようですが、意外と守れていない方が多いんです。
電気をつけっぱなしで眠るのは最悪です。また日本の夏は日の出が早すぎるので、カーテンを開けっ放しで眠るのも「早朝覚醒」という不眠症の一種の原因になってしまいます。
また、テレビやラジオをつけっぱなしにするのも睡眠の質が悪くなります。
人間の聴覚は睡眠中も働き続けていて、とくに人間はコミュニケーションする動物なので、人の声には敏感に反応してしまうんです。人の声は本当に覚醒作用があるので、自覚的には起きていなくても、人の声が聞こえているところで眠ろうとすると確実に睡眠は浅くなります。
柳沢教授:寝室の適温を保つことも大切です。
快適な温度は人によって異なるので、ご自身にとって眠るのに心地よい温度を決めて、その温度を朝まで保ちましょう。家族やパートナーと一緒の寝室を使っている方は、寝具などで調整しながら空調で適温を朝まで保つようにしてください。
日本人は「エアコンをつけっぱなしで眠ると体に悪い」と思っている方が多いのですが、それは何の根拠もない都市伝説のようなもの。欧米の住宅では、24時間空調が当たり前なんです。
もちろんエアコンの冷たい風が直接身体に当たるのは、皮膚の温度が下がりすぎるのでよくないですが、風向を調整して適温を保てば問題ありません。「電気代がもったいない」「エコじゃない」という方もいらっしゃいますが、人間の健康にとっては睡眠の質が悪くなる方が問題です。
柳沢教授:ディナータイム以降は、カフェインを避けましょう。
コーヒーや緑茶など、カフェイン飲料を飲むとだいたい4〜5時間は覚醒作用が持続するといわれています。就寝時間が0時なら、19時以降はやめておいた方がよいでしょう。
レストランでコーヒーか紅茶の選択肢があれば、コーヒーよりカフェインが少ない紅茶を選ぶのがおすすめです。どうしても夜にコーヒーが飲みたくなったら、デカフェを選んでみてください。
また、就寝直前のアルコールも控えましょう。
世界的に見ると、日本人は寝酒(眠るためのお酒)を飲む方が多い傾向にあります。確かにアルコールそのものには催眠作用があるので、お酒を飲めば少し眠気が出てくるんです。
しかし、アルコールの代謝物「アセトアルデヒド」には強い覚醒作用があります。深酒したことがある方は「寝落ちして2〜3時間後、夜中に目覚めてしまった」「夜中に起きたら、今度は眠れなくなってしまった」……なんて経験がありませんか?
「アセトアルデヒド」の覚醒作用が睡眠を妨げるので、やはりディナータイム以降のアルコールも控えることが大切です。お酒が好きな方は完全にやめなくてもいいので、できるだけ早い時間に切り上げることをおすすめします。
柳沢教授:睡眠の質を改善する方法として効果的なのが、眠るためのルーティンです。
眠るためのルーティンとは、これをやればよく眠れるという「おまじない」みたいなもの。自分なりの方法でいいので、心も体もリラックスできるやり方を発見してみてください。
▼眠るためのルーティン例
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何がきっかけで眠くなるのかは、人によって異なります。科学的な意味で「万人に共通する方法」というのはないので、自分にぴったりのルーティンを見つけていきましょう。
脳のパフォーマンスを上げる方法として話題になっている「パワーナップ」について、柳沢教授に教えていただきました。
柳沢教授:「パワーナップ」とは、昼食を食べたあとの午後1時くらいに20分ほど昼寝をすることです。
睡眠負債を抱えている方が軽い仮眠を取ると、脳のパフォーマンスが上がることが証明されています。
日本の働き世代は、どうしても夜の睡眠時間を確保できない方が多いようです。昼間に強烈な眠気が襲ってくる方は、ぜひ「パワーナップ」を試してみてください。
お昼ごはんを食べたら静かで落ち着けるところに移動して、必要な方はアイマスクや耳栓をつけましょう。完全に横になるか机にしっかり伏せるようにして、首が船をこがないような体勢になるのがポイントです。
リラックスできる体勢で目を瞑れば、睡眠不足の方なら数分で眠りに落ちてしまうはず。つまり、昼間でも数分でも眠れる方は睡眠負債を抱えているということです。
柳沢教授:「パワーナップ」の時間は、だいたい20〜30分が最適です。
寝落ちしてから数分〜10分くらいの間に「ノンレム睡眠第二層」という本格的な睡眠に入ります。「ノンレム睡眠第二層」が2〜3分続いたところで起きると、ちょうどいいタイミングで脳がリフレッシュできます。
つまり、寝落ちてから脳がリフレッシュするまでの時間が平均20分くらいということです。
柳沢教授:「パワーナップ」といっても、30分以上眠ってしまうのは逆効果。
長く眠りすぎると「ノンレム睡眠第三層」という深睡眠に入ってしまうので、今度は起きるのに時間がかかってしまうんです。深睡眠に入った段階で叩き起こされたとしても、最初の10〜20分は頭がぼーっとしてしまうでしょう。
深い睡眠から目覚めた直後に頭がぼーっとすることを「睡眠慣性(Sleep Inertia)」といいます。それは避けたほうがいいので、深睡眠に至らない20分くらいで「パワーナップ」を切り上げることが大切です。
柳沢教授:「パワーナップ」を取る前に1杯のコーヒーを飲むと、20〜30分後に起きやすくなります。
なぜなら、コーヒーを飲んでからカフェインが巡るのにかかる時間が大体20〜30分だからです。つまり「パワーナップ」を切り上げる時間に、ちょうどよくカフェインの覚醒作用が効いてくることになります。
20〜30分で起きられるか不安な方や、起きてからぼーっとしてしまいそうな方は「パワーナップ」前のコーヒーを試してみてください。
柳沢教授:夜に十分な睡眠時間を確保できるなら、「パワーナップ」は必要ありません。
夜十分に眠っている方は、昼間に眠ろうとしても眠れないでしょう。夜にしっかり眠っている方が無理に昼寝すると、今度は夜に眠れなくなってしまうので、むしろ逆効果です。
起きている状態から眠りに入るまでの時間を「睡眠潜時」といいますが、夜の「睡眠潜時」は寝付きがよい方なら1〜2分以内で眠ってしまいます。しかし昼の「睡眠潜時」というのは、夜きちんと眠っている方なら20〜30分かかってしまうんです。
「昼間眠くならない」「昼寝しようとしてもできない」という方は、無理に「パワーナップ」を取らなくても大丈夫。夜しっかり眠って昼間は起きている、理想的な睡眠サイクルを保つようにしてください。
「睡眠の質」を高めることが重要視されていますが、まずは「睡眠の質」よりも「量」を確保することが大切です。
ご自身にとって適切な睡眠時間をしっかり確保しないまま「睡眠の質」を高めようとしても、あまり意味がありません。夜に7〜8時間のまとまった睡眠が取れるようになってから、寝室環境の改善や夜のルーティンなどに取り組んでみてください。
忙しくてどうしても夜の睡眠時間が確保できない方は、午後1時くらいに20分の仮眠をとる「パワーナップ」も効果的です。睡眠不足の方が「パワーナップ」をとると脳のパフォーマンスが上がり、午後も快活に過ごしやすくなるので、昼間に眠くて集中できない方はぜひ試してみてください。
睡眠は質よりも量を確保することが重要
睡眠時間を確保した上で寝室環境やルーティンを見直そう
睡眠不足なら20分くらいの昼寝「パワーナップ」で脳のパフォーマンスを回復できる
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疲れやすくなってきた、いつも身体がだるいと感じる方へ
若いころと比べると、年齢を重ねるごとに、少しの生活習慣の乱れで疲れを感じやすくなってきます。
健康な身体や肌を保つためには、バランスの取れた食生活や適度な運動、質の良い睡眠が非常に重要です。
しかしながら、忙しい日々の中でどれも完璧にこなすことは難しいはず。そんな時に、考えたいのが、サプリメントで不足している栄養を補うことです。
いつまでも元気で美しくいたい、そうお考えの方はぜひこの機会に検討してみましょう。