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「年齢を重ねても病気になりたくない」「いつまでもハリのあるお肌を保ちたい」などと考えている方もいるでしょう。
高齢化が進む日本では、生命科学におけるアンチエイジングの研究が盛んに行われています。そこで注目を集めているのが、細胞の若返りを促す「サーチュイン遺伝子(長寿遺伝子)」の働きです。
そこで今回は、九州大学大学院農学研究院の片倉喜範教授に「アンチエイジングとサーチュイン遺伝子」について教えていただきました。少し専門的で難しい分野になりますが、健康と若々しさを保つためにとても役立つ内容なので、ぜひ最後までチェックしてみてください。
サーチュイン遺伝子(長寿遺伝子)とは、アンチエイジングを実現するために重要な遺伝子です。
サーチュイン遺伝子(長寿遺伝子)が活性化すると、傷ついたDNAが修復されて元気な細胞を維持できます。全身の細胞一つひとつを元気にすれば、年をとっても病気になりにくい体を保てるはずです。
サーチュイン遺伝子(長寿遺伝子)を活性化させることで、さまざまな老化現象の改善が期待できます。
▼サーチュイン遺伝子活性化で改善が期待される症状
サーチュイン遺伝子(長寿遺伝子)は心臓にも脳にも、筋肉にも良い効果があります。
今までは心臓なら心臓の治療、脳なら脳の治療……というように、それぞれ異なる治療が行われてきました。しかしこれからは、もっと根本的な改善をしていく時代になるかもしれません。
全身の細胞の健康を維持できれば、そもそも病気をしない健康な体が作れるのです。全身にあるサーチュイン遺伝子(長寿遺伝子)を食品によって活性化できれば、全身のアンチエイジングにつながります。
サーチュイン遺伝子(長寿遺伝子)は、SIRT(サート)1〜7までの7種類があります。
中でも注目されているのは、SIRT1、3、6です。ここでは特に研究が進んでいるSIRT1と、多くの方に関係するSIRT3の機能を簡単に見ていきましょう。
SIRT1は、代謝改善や炎症抑制が期待できます。
特に有名なのは、脳機能を改善する効果です。サーチュイン遺伝子(長寿遺伝子)の中でもSIRT1を活性化することで、認知症の予防や改善を実現できると考えられています。
SIRT3は、活性酸素を除去する効果が期待できます。
活性酸素の除去によって改善されるのが、加齢性難聴です。
年齢を重ねて「耳が遠くなった」と感じることはありませんか? 実は、耳が聞こえにくくなるのは耳の中で活性酸素が生まれ、細胞が死んでしまうからなのです。
しかしSIRT3を活性化させると、加齢性難聴を抑制できるという論文が出ています。年を取って耳が聞こえにくくなった方でも、サーチュイン遺伝子(長寿遺伝子)を活性化することで治るかもしれません。
ミトコンドリアとは、私たちの細胞の中にあるエネルギー生産工場のような働きをする細胞内小器官です。一細胞当たり100〜2000個程度含まれます。
若々しく健康な体を保つためには、ミトコンドリアを元気にしていくことが非常に重要です。
ミトコンドリアが傷つくと、細胞にダメージを与える活性酸素を産生します。
活性酸素が過剰に産生されると、老化やがん、生活習慣病などの原因になってしまうのです。
しかし年齢を重ねると新陳代謝が落ちるため、傷ついたミトコンドリアが代謝されずに老廃物として蓄積されます。その結果、加齢性の不調や見た目の老化が起こるのです。
ミトコンドリアは全身に存在しますが、特に重要視されているのが脳、筋肉と皮膚です。
特に近年では、皮膚のミトコンドリアに注目が集まっています。皮膚の細胞のミトコンドリアを維持できないマウスは、しわまみれになってしまうのです。
ヒトの皮膚でも同じように、しわまみれになってしまうことが考えられます。この結果から、今後は皮膚のミトコンドリアを改善する化粧品が出てくるかもしれません。
皮膚にとって、紫外線は毒です。皮膚が紫外線を過度に浴び続けると、皮膚細胞のDNAが傷つきます。
肌を守るためには、事前にサンプロテクトの成分が入った化粧品を塗ることが大切です。
しかし、うっかり日焼け止めを忘れて、紫外線を浴びてしまうこともあるでしょう。そんなときでもサーチュイン遺伝子(長寿遺伝子)を活性化させれば、DNAは修復されるのです。
サーチュイン遺伝子(長寿遺伝子)を活性化させる化粧品の開発が進めば、日焼けしてしまった後からでも対処できるかもしれません。現段階では、サーチュイン遺伝子(長寿遺伝子)を活性化させる食品やサプリメントを取り入れておくとよいでしょう。
年齢を重ねても新陳代謝の高い状態を維持していれば、傷ついたミトコンドリアを修復できます。
ダメージを受けたミトコンドリアをオートファジーが分解し、さらにサーチュイン遺伝子(長寿遺伝子)が再び新しいミトコンドリアに作り変えるのです。
オートファジーとサーチュイン遺伝子(長寿遺伝子)は、カロリー制限(空腹)によって活性化することが分かっています。さらに新しい研究では、食べることでアンチエイジングを実現する食品開発も進んでいます。
サーチュイン遺伝子(長寿遺伝子)は、食事・運動・睡眠によって改善できると考えられています。
サーチュイン遺伝子(長寿遺伝子)を活性化させる食品成分として、今注目を集めているのが「ウロリチン」です。ウロリチンはザクロに含まれるエラグ酸の腸内代謝物で、傷ついた細胞の修復をサポートしてくれます。
例えば細胞に紫外線を当てるとDNAがズタズタになるのですが、そこにウロリチンをかけると治してくれるのです。ウロリチンは、ザクロジュースやサプリメントから摂取できます。
また基本的な生活習慣として、適度な運動や良質な睡眠もアンチエイジングには欠かせない要素です。健康的な生活習慣とヘルシーな食事、さらにサーチュイン遺伝子(長寿遺伝子)を活性化させる食品成分を積極的に取り入れて、いつまでも健康で長生きできる体を保ちましょう。
若返り効果が注目される老化防止成分って?ザクロに含まれる「ウロリチン」と取り入れ方を解説!
超高齢社会に突入した日本では、社会保障費の増大が非常に危機的な社会問題になっています。
高齢者が増えると病気になる方が増え、医療や介護にかかる社会保障費の負担が大きくなってしまうのです。
病気になったら薬を飲んで治療すればいい、という簡単な問題ではありません。増大した社会保障費の負担が増えると、最終的には日本経済に大きなダメージを与えることになります。
日本が抱える社会問題を解決するためには、病気にならない体を保ち、健康寿命を伸ばすことが重要な課題です。誰もが健康のまま長生きする体を保つ「サクセスフル・エイジング」を目指すために、食べることで若返るような食品の開発に取り組んでいます。
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ご紹介した通り、サーチュイン遺伝子はさまざまな老化現象の改善に効果が期待できますが、髪の老化現象である白髪の改善にも効果が期待できます。
毛の根元である毛根は、毛包と呼ばれる組織に包まれており、毛包の中には髪を作り出す毛母細胞と、髪の色を作り出すメラノサイト(色素形成細胞)があります。このメラノサイトが作り出したメラニン色素が毛母細胞に渡されることで、黒い髪が生えてくる仕組みです。しかしさまざまな原因でメラノサイトがうまく働かなくなったり減少したりすると、メラニン色素を十分に作れなくなって、白髪が生えてしまいます。
メラノサイトがうまく働かなくなる原因の一つが加齢です。毛包にはメラノサイトの元になる色素幹細胞と呼ばれる細胞の他に、毛包を再生する働きを持つ毛包幹細胞があります。年齢を重ね、毛包幹細胞を毛包につなぎ止めているコラーゲンが減少すると、毛包幹細胞が毛穴から排出されてしまい、それに伴って色素幹細胞も維持できなくなります。その結果、メラノサイトが作られなくなるので、メラニン色素を生成できず、白髪が生えてしまうのです。
また色素幹細胞は、毛包よりも少し上の「ニッチ」という場所にありますが、加齢によって未熟な色素幹細胞がニッチとは異なる場所で分化してしまうことも、白髪ができる要因の一つです。ニッチから色素幹細胞が消えると、毛包にメラノサイトを供給できなくなり、メラニン色素を毛母細胞に渡せなくなるため、白髪が生えてきてしまうのです。
幹細胞を再活性化させる働きを持つサーチュイン遺伝子を活性化させれば、これらの現象が起こるのを防げるので、白髪を改善する効果が期待できると考えられています。
サーチュイン遺伝子(長寿遺伝子)には、全身の細胞を若々しく保つ働きがあります。
細胞一つひとつが元気になれば、私たちは何歳になっても病気になりにくい体を維持できるのです。筋肉の改善や肌老化の改善にもつながり、見た目の若々しさも保ちやすくなります。
超高齢社会に突入した日本では、健康寿命を伸ばして社会を活性化させることが重要な課題です。健康が維持できれば医療や介護を利用する高齢者が減るので、日本経済の回復も期待できます。
サーチュイン遺伝子(長寿遺伝子)は、ヘルシーな食事と適度な運動、良質な睡眠を意識して生活することで活性化しやすくなります。さらにザクロのウロリチンなどサーチュイン遺伝子(長寿遺伝子)を活性化させる食品成分も積極的に取り入れて、細胞レベルの若返りによる健康美を目指しましょう!